よく考えると当たり前の話ですが、あまり意識したことがない人も多いと思うので、今日はそんな話題を一つ。

ご存知のとおり、医療保険のメインは入院給付金です。入院した日数分だけお金がおりるので、まとまった額を受け取りたければそれなりに長く入院する必要があります。ところが、国は医療費削減のために入院主体の治療から脱却を図っていますから、平均在院日数はどんどん短くなっています。

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とはいえ、それでも32.8日もあるので、給付金日額5000円でも15万円以上の計算になります。なんだ、じゃあたっぷり受け取れそうだな……と思いきや、この平均値を鵜呑みにしてはいけません。

 

■32.8日は全病床区分を引っくるめた数字

平均値という言葉はある種の説得力をまとっていますが、参考にできるかどうかは内訳次第です。極端な話、年収1億円の社長が社員9名を年収300万円で雇ったとき、一人あたりの平均年収は1000万円超えになるわけですから、突出した少数派が平均を押し上げている可能性を考えなければいけません。

そこで、平均在院日数の内訳を調べてみると、思ったとおりの数字が並んでいました。

病床区分(※) 平均在院日数(患者数)
精神病床 341.6日(31.3千人)
感染症病床 7.9日(0.3千人)
結核病床 87.8日(1.1千人)
療養病床 207.8日(42.7千人)
療養病床 医療保険適用病床 186.9日(38.5千人)
介護保険適用病床 399.1日(4.3千人)
一般病床 18.9日(1,107.3千人)

※ベッドの使い道を定めた区分のこと。精神病床なら精神疾患の治療に、療養病床なら介護や機能回復訓練などに用い、それ以外の用途に使用するのは原則禁止
※平成23(2011)「患者調査の概況」より一病院のみを抜粋・編集

一般病床と精神病床との差は20倍弱もありますね。療養病床と比べても10倍以上の差です。入院患者のほとんどが一般病床に入院しているなかで、その入院日数が3週間弱。しかもこれは全年齢を引っくるめた数字なので、現役世代だけに絞って調べるともっと短くなるでしょう。

■良い病院ほどさらに入院日数が短くなる

入院日数の短縮化を加速させているのは、『DPC/PDPS (1日当たり定額報酬算定制度)』(以下、DPC/PDPS)という支払制度です。導入されて久しいので今さら説明する必要はないかもしれませんが、要は、1日にかかる医療費が傷病によってあらかじめ決められている制度のことです。それまでの『出来高払い』制のように、「投薬は◯円」「検査は◯円」「レントゲンは◯円」と、実施したら実施した分だけ合算する計算式とは大きく異なります。

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出典:伊藤病院

DPC/PDPSは医療費削減の一環で導入されたこともあり、入院期間が傷病ごとの全国平均を超えると病院の収益が下がるように出来ています。具体的には3段階に分けられていて、たとえば入院初日から14日までなら1日3万円、28日までなら2万円、それ以降は1万といった具合に減額されます。

そうなると、各病院がこぞって入院の短期化に努めるのは当たり前。さらに、前年度の治療実績や、病院の格付けにあたる『病院機能評価機構』のランク、施設基準の充実度に応じて請求できる額が増えるため、経営熱心な病院は、腕のいい医師を確保し、コ・メディカルをそろえ、施設設備を整えた中で病院の回転率を上げていきます。

つまり、良い病院は医療費が高いうえ、早く退院させられるので医療保険の効果が発揮できないということです。万一のために医療保険に入ったのに、安心を求めてランクの高い病院を選ぶと医療保険が役に立たなくなる……。あまり気づきたくないことですが、事実だから仕方ありません。

■おわりに

誤解されると困るので最後に付け加えておきますが、別に医療保険は不要だと主張しているのではありません。医療保険は改変の早い商品ですし、今後も時代のニーズに合わせた商品が開発されるでしょう。それこそ、主契約に通院給付金が入ったものとかですね。

ただ、現状はこうなので、少なくとも120日型や180日型のような長期保証型の保険は、お世話になる確率が低いと思っています。